2015年10月14日
【試合レポート】2015明治安田生命J2リーグ第36節徳島ヴォルティス戦

試合レポート

 試合から4日が経過しても、いまだ興奮が冷めやらない大きな1勝だった。J2第36節アウェー徳島戦。J初出場のDF川岸祐輔ら若手を積極的に起用したザスパが、チーム一丸となった粘りの戦いで徳島に競り勝った。新戦力のMFユン・ヨンスンのJ初ゴール、久しぶりのスタメン出場となったFW小牟田洋佑の体を張ったポストプレー、そしてプロデビュー戦を勝利で飾った川岸の歓喜の男泣き―。多くの印象深いシーンに包まれた8試合ぶりの勝利は、チームを成長させる何よりのカンフル剤となったに違いない。服部浩紀監督も「きょうの勝利によってまだまだ上を見ていくことができる」と、今季の残り試合での躍進を誓った。
 今季ワーストの4連敗を止めたものの、2試合連続引き分けと今一つ波に乗り切れていなザスパは、前節ホーム京都戦後、大胆なメンバー変更を実施。1トップには10試合ぶりに大卒ルーキーの小牟田が入り、左サイドバックにはアマチュア契約のDF川島將が第12節アウェー福岡戦以来5カ月ぶりとなる先発。そしてセンターバックの一角にはJ初出場となる大卒ルーキーの川岸がスタメンに抜擢された。前節京都戦の翌日、5日に行われたJ1川崎とのトレーニングマッチで活躍した選手を積極的に起用した服部監督は、「勝てていない状況なので、思い切った変化で流れを変えたい」とその狙いを説明した。
 服部采配が吉と出るか凶と出るか。試合は立ち上がりから徳島ペースとなり、ザスパは自陣で耐える展開となった。5分には川岸がバイタルエリアで相手を倒し、危険な位置でFKを献上。このピンチを何とか防ぐと、チーム全体が落ち着きはじめ、我慢しながら好機をうかがう得意の流れが出始めた。
 最初のチャンスは9分、ハーフウェーライン付近のMF松下裕樹のFKから、小牟田がハイボールに競り勝って前線に落とすと、このボールに反応したMF黄誠秀が相手DFの間を突いてGKと1対1に。シュートは惜しくもGKのセーブにあったが、あと一歩でゴールという決定的な場面をつくった。特に持ち味の高さを生かした小牟田のプレーが光った。
 その後も守りからリズムをつくるザスパは、相手の攻撃を受ける展開が続いた。相手にボールを握られ、多くの時間を自陣に押し込まれながらも、一人一人が体を張った守備でピンチを未然に防ぎ、しぶとく耐え続けた。
 9分のシーン以降、思うようにチャンスをつくれず、守り続ける時間が続くザスパ。ボールを奪った後、単発なプレーやミスからボールを失う場面が目立ち、得意のカウンターは影を潜めた。前半はわずかシュート1本。粘り強い守備が光ったものの、攻撃に多くの課題を残し、スコアレスで折り返した。
 ハーフタイム。服部監督はここまでの粘りの戦いをたたえつつ、攻撃時の精度の悪さを指摘。特に小牟田が前線で孤立する場面が多いことを懸念し、MF江坂任とMF吉濱遼平の両サイドアタッカーに、小牟田といい距離感を取るよう指示した。
 そして始まった後半。簡単には流れは変わらず、前半同様に相手の攻撃を受ける展開が続いた。とにかく守り続けるといった展開で、何度も自陣PA内に入り込まれたが、GK富居大樹を中心にしぶとく守り、ゴールを死守した。
 何とか好機を見出したいザスパ。後半初めてのシュートは16分だった。黄誠秀の落としたボールにMF坂井洋平が左足を振り抜き、強烈なロングシュート。相手GKのセーブにあったが、枠をとらえたシュートで相手ゴールを脅かした。
 試合は時間とともに両チームの攻防が激しくなり、徐々にゴールのにおいが漂い始めた。ザスパは25分、大きなピンチを迎えた。自陣PA内で川岸と相手選手が競り合い、このボールのこぼれ球に徳島FW佐藤晃大とGK富居が反応。2人が交錯し、あわやPKかと思われたが、判定はノーファウルとなり、ザスパは肝を冷やした。
 思うようにチャンスをつくれない時間が続くザスパ。何とか流れを変えようと、服部監督は33分に黄誠秀に代えてユン・ヨンスンを投入。この采配で試合が動くこととなった。
 交代後、江坂を前線に上げ、ユン・ヨンスンを左サイドに配置。これで小牟田と江坂の関係が改善され、前線でボールが収まるようになり、パスがつながり始めた。
 そして39分、待望の瞬間が訪れた。GK富居のロングフィードをハーフウェーラインで小牟田が粘り、3度も競り合って何とかボールをおさめると、いい距離感で待ち構えた江坂がパスを受け、ドリブルで運んでスルーパス。このボールに反応して走り込んだのが、途中出場のユン・ヨンスンだった。「とにかくボールに向かって走っていた。倒れた後、起き上がってボールを探したら、ゴールに入っていた」とユン・ヨンスン。わずかに長かった江坂のスルーパスを諦めずに追いかけ、相手DFがスライディングでクリアしようとしたところに詰めると、相手のクリアボールが自らの足に当たって跳ね返り、強烈なシュートとなってゴールに向かっていった。ボールはクロスバーに当たった後、チームの勝利への執念が乗り移ったかのようにゴールに吸い込まれていった。先発起用に応えた小牟田のポストプレー、小牟田が競り勝つのを信じていい距離感でパスを待っていた江坂、そして泥臭く諦めずにボールを追いかけたユン・ヨンスンの走り、まさにそうしたチームの気持ちが先制ゴールを生み出した。
 3分ものアディショナルタイムを含めた残り時間。徳島の猛反撃を受け、何度も危ない場面を迎えたが、守備の集中力を切らさずに守り切ったザスパ。終了のホイッスルが鳴ると、歓喜が爆発した。「純粋にうれしくて涙が出てしまった」と川岸。デビュー戦を勝利で飾ったムードメーカーを筆頭に、選手たちは8試合ぶりの勝利の喜びに浸った。
 大胆なメンバー変更が勝利につながったことは、チーム内の大きな刺激となったことだろう。DF青木良太も「(ユン)ヨンスンが決めてくれて勝つことができて本当によかった。川岸や小牟田、のぶ(川島)も自分の武器を生かして戦ってくれたし、そういう新しい選手の頑張りが結果につながったことはチームとして大きいこと。競争が生まれることでチームが活性化される」と強調する。今季でのJ1昇格の希望が絶たれ、残り試合の戦いをいかに来季につなげるかが重要視される中、若い力の躍動によってチーム内競争が激化することは願ってもない状況だ。
 「一桁順位」という新たな目標に向け、今季残り6試合でどこまで勝ち点を積み上げられるか。来季に希望をつなぐためにも、どん欲に結果を求めたい。



【結果】
ザスパクサツ群馬 1‐0 徳島ヴォルティス

会場:鳴門・大塚スポーツパークポカリスエットスタジアム

10月10日(土)16時00分キックオフ
前半 0−0
後半 1−0

詳しくは
http://www.thespa.co.jp/game/2015/game/151010.html
をご覧下さい。

本件に関するお問合せは(株)草津温泉フットボールクラブ 広報部
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